~経営者が知っておきたい代表的なハラスメント~
前回は、「ハラスメント対策は大企業だけのものではなく、中小企業や個人事業主にとっても重要な経営課題」であることをお伝えしました。
今回は、職場で特に知っておきたい代表的なハラスメントについてご紹介します。
まず、多くの方が耳にしたことのあるものが「パワーハラスメント(パワハラ)」です。
厚生労働省では、職場において優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、労働者の就業環境を害することとされています。
例えば、「能力が足りないから指導する」こと自体は、業務上必要な場合もあります。しかし、人前で何度も大声で叱責したり、「役立たず」「辞めてしまえ」と人格を否定するような発言をしたりすることは、パワハラに該当する可能性があります。
次に、「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」です。
性的な冗談や容姿に関する発言、必要以上に身体へ触れる行為だけではありません。本人が嫌だと感じる性的な言動によって働きにくい環境となれば、セクハラとなる可能性があります。
「昔は普通だった」「悪気はなかった」という理由で許されるものではありません。相手がどう受け止めるかという視点が大切です。
また、「マタニティハラスメント(マタハラ)」や「パタニティハラスメント(パタハラ)」にも注意が必要です。
例えば、妊娠・出産や育児休業の取得を理由に、不利益な扱いをしたり、「みんなに迷惑がかかるから育休は取らないでほしい」といった発言をしたりすることは、法律上問題となる場合があります。
近年、相談件数が増えているのが「カスタマーハラスメント(カスハラ)」です。
取引先や顧客からの暴言や過度な要求、長時間にわたるクレームなどにより、従業員が精神的な負担を抱えるケースが増えています。
「お客様だから仕方がない」と考えがちですが、従業員を守ることも経営者の大切な役割です。必要に応じて対応方針を決め、組織として対応することが求められます。
このように見ると、「ハラスメントは特別な人がするもの」と思われるかもしれません。しかし実際には、悪意がなくても、相手の受け止め方や言動の積み重ねによって問題となることがあります。
だからといって、「何も注意できない」「部下を指導できない」ということではありません。
仕事上必要な指導を、相手の人格を尊重しながら、冷静に伝えることは、経営者や管理職の大切な役割です。重要なのは、「感情で叱る」のではなく、「事実に基づいて伝える」ことです。
ハラスメント対策は、経営者と従業員が互いに気持ちよく働ける職場をつくるための取組です。まずは代表的なハラスメントを正しく知ることが、より良い職場づくりへの第一歩になります。
次回は、「ハラスメントを防ぐ職場のコミュニケーション」をテーマに、日頃の声掛けや信頼関係づくりなど、小規模事業所でもすぐに実践できるポイントをご紹介します。

