社労士の鶴木がWebマガジン『くらしごと』でインタビューされました

年次有給休暇のトラブル事例と企業が取るべき対応策(4/5)

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目次

【第4回】トラブルが発生してしまった場合の対応策

まずは事実関係を正確に把握する

年次有給休暇に関するトラブルが発生した場合、まず何よりも重要なのは、感情的にならず、冷静に事実関係を正確に把握することです。「従業員が有給を取らせてもらえないと言っている」「経営者は正当な理由で断ったと主張している」—こうした対立が生じたとき、双方の言い分だけを聞いていては、本当の問題は見えてきません。

私が企業支援で最初に行うのは、客観的な記録の確認です。年次有給休暇管理簿、勤怠記録、申請書、メールやメッセージのやり取りなど、できる限りの証拠を集めます。そして、いつ、誰が、どのような申請をし、それに対してどのような対応がなされたのかを時系列で整理します。

この段階で重要なのは、「誰が悪い」という判断を急がないことです。多くの場合、トラブルの背景には、制度の理解不足、コミュニケーション不足、組織的な問題など、複数の要因が絡み合っています。表面的な対立だけでなく、根本原因を見極めることが、真の解決につながるのです。

法律に照らして正確な判断を行う

事実関係が明らかになったら、次にそれを労働基準法に照らして判断します。ここで絶対に譲れないのが、法令遵守という基盤です。たとえ経営者に同情すべき事情があったとしても、法律違反は法律違反です。

例えば、従業員が適法に有給休暇を申請したにもかかわらず、正当な理由なく拒否した場合、それは労働基準法第39条違反に該当します。また、有給休暇を取得したことを理由に、不利益な取り扱い(賃金の減額、人事考課での低評価、配置転換など)を行うことも違法です。

私は経営者の方々に対して、言うべきことは誠実に伝えるべきだと考えています。「このままでは法律違反になります」「労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性があります」—厳しい言葉であっても、それが真実であれば、伴走者として正直に伝える責任があります。

同時に、法律をそのまま機械的に当てはめるのではなく、現場の実情を踏まえた現実的な解決策を一緒に考えることも、社労士の重要な役割です。法律と現実の間で、どう納得感のある着地点を見つけるか—ここに専門家としての腕の見せ所があると考えています。

従業員との対話を重視した解決を目指す

トラブルが発生したとき、最も避けるべきは、一方的な通告や強硬な対応です。たとえ法的に企業側が正しかったとしても、従業員が納得していなければ、職場の雰囲気は悪化し、最悪の場合、退職や訴訟に発展する可能性もあります。

私が支援する際に大切にしているのは、対話を通じた解決です。従業員がなぜそのような主張をしているのか、どんな不満や不安を抱えているのかを丁寧に聞き取ります。一方で、経営者側の事情や考えも従業員に伝え、相互理解を深めていきます。

例えば、退職時に大量の有給消化を申請された場合、「法律上は認めざるを得ないが、引き継ぎについて協力してほしい」と率直に依頼することも一つの方法です。その際、「引き継ぎ期間中は有給扱いにする」「退職日を少し延ばす代わりに有給を消化する」など、双方が納得できる妥協案を提示することで、円満な解決が図れることもあります。

労働基準監督署への対応

トラブルがエスカレートすると、従業員が労働基準監督署に申告するケースもあります。この場合、監督署から事業主に対して事情聴取や是正勧告が行われる可能性があります。

監督署から連絡があった場合、決して無視したり、虚偽の報告をしたりしてはいけません。誠実に対応し、求められた資料(就業規則、賃金台帳、年次有給休暇管理簿など)を速やかに提出することが重要です。

もし違法な状態があったことが判明した場合は、速やかに是正措置を講じ、再発防止策を明確にすることが求められます。この段階で社労士などの専門家に相談し、適切な対応を取ることをお勧めします。

私自身、労働基準監督署への対応支援を数多く行ってきましたが、誠実に対応する企業に対しては、監督署も協力的に指導してくれることが多いです。逆に、隠蔽や虚偽報告をすると、事態は確実に悪化します。

再発防止のための組織改善

トラブルが解決した後、最も重要なのは再発防止です。同じ問題を繰り返さないためには、表面的な対処ではなく、組織の仕組みや文化そのものを見直す必要があります。

具体的には、就業規則の見直し、有給休暇管理体制の強化、管理職への教育、従業員への周知など、多角的なアプローチが必要です。また、トラブルの原因が組織風土にある場合は、経営者自身の意識改革も求められます。

私は、トラブルを単なる「問題」として捉えるのではなく、「組織が成長するきっかけ」として前向きに捉えることが大切だと考えています。適切に対応し、改善を積み重ねることで、企業はより強く、働きやすい組織へと進化していくのです。

次回は、これまでの内容を踏まえ、中小企業が目指すべき労務管理の姿について、私の考えをお伝えします。

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この記事を書いた人

鶴木貞男のアバター 鶴木貞男 特定社会保険労務士・行政書士
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