~感情ではなく記録で会社を守る
前回は、労働トラブルが発生した際には、思い込みで判断せず、まずは事実確認を行うことの重要性についてお伝えしました。
事実確認を進める中で、もう一つ欠かせないのが「記録を残すこと」です。
労働トラブルでは、「言った」「言わない」、「聞いた」「聞いていない」といった認識の違いが問題になるケースが少なくありません。時間が経つにつれて記憶は曖昧になりますし、それぞれの立場によって受け止め方が異なることもあります。
だからこそ、会社を守るためには、感情や記憶だけに頼るのではなく、客観的な記録を残しておくことが大切です。
例えば、従業員から相談を受けた際には、相談日時や相談者の氏名、相談内容、対応した内容などを簡潔に記録しておきましょう。特別な様式を用意する必要はありません。ノートや相談記録シートなど、後から内容を確認できる形で残しておくことが重要です。
また、面談を行った場合は、「誰と」「いつ」「どこで」「どのような話をしたのか」を整理して記録しておくと、その後の対応がスムーズになります。
さらに、勤怠記録やタイムカード、シフト表、メール、チャット、業務日報なども重要な資料です。これらは労働時間や業務の実態を確認する際の客観的な証拠となるため、日頃から適切に保管しておきましょう。
一方で、記録を作成する際には、感情的な表現や個人的な評価を書き込まないことも大切です。
例えば、「反省していない」「態度が悪い」といった主観的な表現ではなく、「○月○日に○○という発言があった」「○時から○時まで面談を実施した」といった事実を中心に記録するよう心掛けましょう。
事実と意見を分けて記録することで、後から内容を見返した際にも状況を正確に把握しやすくなります。
また、記録には個人情報が含まれることも多いため、保管方法にも注意が必要です。関係者以外が閲覧できないように管理し、紙の資料であれば施錠できる場所に保管し、電子データであればパスワード管理を行うなど、適切な情報管理を心掛けましょう。
「記録を残す」というと手間に感じるかもしれません。しかし、そのひと手間が、後になって会社を守る大きな力になります。
特に従業員数が少ない会社では、「お互いによく知っているから大丈夫」と考えてしまいがちですが、そのような会社だからこそ、客観的な記録を残す習慣が大切です。
まとめ
労働トラブルへの対応では、記憶よりも記録が重要になります。
相談内容や面談の経過、客観的な資料を適切に残しておくことで、会社として冷静かつ公平な対応がしやすくなります。
次回は、「初動対応で絶対に避けたいNG行動」をテーマに、経営者が良かれと思って取った行動が、かえってトラブルを大きくしてしまうケースについて解説します。

