第4回:よくある質問とその回答
北海道の企業から寄せられるよくある質問
どの業種が対象になるのか
カスハラ対策義務化は、業種を問わず、すべての事業主が対象となります。接客業や小売業だけでなく、製造業、建設業、医療・福祉、士業など、あらゆる業種が該当します。
「うちは顧客と直接接する機会が少ないから関係ない」という声を聞くこともありますが、それは誤解です。電話での問い合わせ対応、メールでのやり取り、訪問営業、取引先との商談など、顧客や取引先との接点がある限り、カスハラのリスクは存在します。
私が企業支援を行う中で感じるのは、業種によってカスハラの形態や発生頻度は異なるものの、リスクそのものはどの業種にも存在するということです。自社の業務特性を踏まえた上で、適切な対策を講じることが求められます。
中小企業にも義務があるのか
結論から申し上げると、企業規模に関わらず、すべての事業主に義務があります。大企業だけでなく、中小企業、零細企業、個人事業主も対象です。
「小規模だから専任の担当者を置けない」「コストをかけられない」という声は理解できます。しかし、義務である以上、規模を理由に対応を免れることはできません。
ただし、中小企業には中小企業なりの対応方法があります。例えば、以下のような工夫が可能です。
- 社長や役員が相談窓口を兼務する
- 外部の社会保険労務士を相談窓口として活用する
- 業界団体や商工会議所の支援制度を利用する
- シンプルだが実効性のあるマニュアルを作成する
私は、法律はそのまま当てはめるのではなく、現場で機能する形に落とし込むべきだと考えています。企業の実情に合わせて、無理なく継続できる仕組みを構築することが重要です。
顧客対応と従業員保護を両立する方法とは
「カスハラに毅然と対応すると、顧客を失うのではないか」という不安は、多くの経営者が抱える悩みです。しかし、顧客対応と従業員保護は、決して対立する概念ではありません。
正当なクレームには真摯に対応する 商品やサービスに不備があった場合、顧客の不満は当然です。こうした正当なクレームには、引き続き真摯に対応します。カスハラ対策は、正当なクレーム対応を否定するものではありません。
線引きを明確にする 問題なのは、正当な範囲を超えた過剰な要求や、従業員の人格を傷つける言動です。「誠実に対応するが、理不尽な要求には応じない」という線引きを明確にすることで、両立が可能になります。
毅然とした対応が企業を守る 実は、理不尽な要求に安易に応じることは、長期的には企業の信頼を損ないます。「あの会社は強く言えば何でも聞いてくれる」という評判が立てば、さらなるトラブルを招きます。逆に、「筋の通らないことには毅然と対応する企業」という姿勢は、健全な顧客との信頼関係を強化します。
私は、中立性と公平性を持ちながら組織全体を見渡せる視座が重要だと考えています。目の前の顧客対応だけでなく、従業員の安全、企業の持続性、社会的責任のバランスを取ることが、真の顧客満足にもつながります。
弁護士や社会保険労務士にはいつ相談すべきか
専門家への相談タイミングは、大きく分けて2つあります。
予防段階での相談(推奨) カスハラ事案が発生する前、つまり体制整備の段階で相談することが最も効果的です。
- 就業規則や社内規程の整備
- 対応マニュアルの作成
- 従業員研修の企画・実施
- 相談窓口の設置方法
この段階で社会保険労務士に相談することで、法令に適合し、かつ実務で機能する仕組みを構築できます。
事案発生時の相談 実際にカスハラ事案が発生した場合は、速やかに専門家に相談すべきです。
- 初期対応の適切性の確認
- 法的リスクの評価
- 顧客への対応方針の決定
- 従業員のケア方法
- 再発防止策の策定
特に以下のような場合は、弁護士への相談も必要になります。
- 顧客が不当な損害賠償を要求してきた
- SNSでの誹謗中傷が深刻化している
- 警察への被害届提出を検討している
- 訴訟に発展する可能性がある
私が伝えたいのは、「問題が起きてから相談する」のではなく、「問題が起きないように事前に相談する」という発想の転換です。予防こそが、企業にとって最もコストが低く、効果が高い投資なのです。
次回予告 第5回(最終回)では、令和8年10月施行時に取り組むべきことと、社会保険労務士へ相談するメリットについてまとめます。

