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就活ハラスメント防止義務化 完全対応ガイド(その1)

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目次

【連載第1回】就活ハラスメントとは? 知らないでは済まされない新常識

2025年6月、企業にとって大きな転換点となる法改正が成立しました。就職活動中の学生に対するセクシュアルハラスメント(就活ハラスメント)の防止措置が、すべての企業に義務化されることが決定したのです。

この連載では、全5回にわたって、中小企業の経営者や人事担当者の皆様が、法改正に適切に対応できるよう、実践的な情報をお届けします。

【連載予定】
第1回(今回): 就活ハラスメントとは? その実態と問題の本質
第2回: 2025年法改正の全貌 企業に求められる義務とは
第3回: 中小企業が見落としがちなリスクと影響
第4回: 実践! 今すぐ始める5つの対策ステップ
第5回: よくある質問と成功事例から学ぶ運用のコツ

「面接で彼氏のこと聞いちゃダメなの?」その質問、アウトです

「面接の場を和ませようと思って、『彼氏いるの?』って聞いただけなのに…」 「OB訪問の後、食事に誘うのって普通じゃないの?」

もしあなたや社員がこんな風に思っているなら、要注意です。その「親しみのつもり」「善意のつもり」の行為が、企業を法的リスクにさらしているかもしれません。

今回の連載第1回では、「就活ハラスメント」とは何か、その実態と問題の本質について解説します。

1. 就活ハラスメントの定義: 優越的な立場の濫用

就活ハラスメントとは

就活ハラスメントとは、採用する企業やその採用担当者が、「優越的な立場を利用して」、就職活動中の学生や求職者に対して行うハラスメント行為のことです。

ここで重要なのが「優越的な立場」という言葉です。

学生にとって、採用担当者は「自分の将来を決める人」です。
– 内定をもらえるかどうか
– 人生の大きな岐路となる就職先
– 断れば不採用になるかもしれない恐怖

この圧倒的な力関係の差が、ハラスメントを生みやすい構造を作っているのです。

「嫌だったら断ればいいじゃないか」──そう思われるかもしれません。しかし、学生は断れないのです。断ることで不利益を被ることを恐れているからです。

セクハラとパワハラ、両方が含まれる

就活ハラスメントには、大きく分けて2つの類型があります。

①セクシュアルハラスメント(セクハラ)

性的な言動によって相手を不快にさせる、または不利益を与える行為。

②パワーハラスメント(パワハラ)

優越的な立場を利用して、精神的・身体的な苦痛を与える行為。

今回の法改正で義務化されるのは「セクハラ」の防止措置ですが、パワハラも深刻な問題として認識されています。

2. 衝撃の実態: 約3割の学生がインターンでセクハラ被害

厚生労働省の調査が明らかにした現実

厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」(2023年度)によると、インターンシップ中にセクハラを経験した学生は30.1%に上ります。

つまり、インターンに参加した学生の約3人に1人が、何らかのセクハラを経験しているのです。

具体的にどんな被害が起きているのか

調査では、セクハラの内容として以下が報告されています。

【被害内容トップ3】
1. 性的な冗談やからかい(38.2%)
「彼氏いるの?」「モテるでしょ?」といった発言
2. 食事やデートへの執拗な誘い(35.1%)
「今日終わったら一緒に飲みに行こう」と断りづらい状況で誘う
3. 不必要な身体への接触(27.2%)
握手の際に手を握り続ける、肩を叩くなど

「冗談のつもりだった」「親しみを込めただけ」──そんな言い訳は通用しません。受け手が不快に感じたら、それはハラスメントなのです。

3. 具体的な就活ハラスメント事例: あなたの会社は大丈夫?

厚生労働省の研修資料では、以下のような行為が就活ハラスメントの例として挙げられています。自社の採用活動と照らし合わせてみてください。

ケース1: 対価型セクハラ

【事例】
幹部社員が女子学生に対し、採用の見返りに不適切な関係を迫った。学生が断ると、「うちの会社には絶対入社させない」と伝え、実際に不採用とした。
【問題点】
採用という企業の優位な立場を利用し、性的要求を押し付けている。断ったことへの報復として不採用にするのは明確な違法行為。

ケース2: 環境型セクハラ

【事例】
面接で「彼氏はいるか?」「結婚や出産後も働き続けたいか?」といった質問を、女子学生にだけ行った。
【問題点】
性別によって異なる質問をすることは、男女雇用機会均等法違反。また、プライベートな恋愛・結婚に関する質問は、学生を不快にさせるセクハラに該当する。
「結婚後も働く意思があるか確認したかっただけ」という言い訳は通用しません。男性にも同じ質問をしていますか?

ケース3: パワハラ(過大な要求)
【事例】
内定者に対し、SNSへの毎日の書き込みを強要。書き込まない学生には「やる気がないなら辞退してください」と威圧的な投稿を繰り返した。
【問題点】
内定という立場を利用し、過度な課題を強要している。「辞退してください」という発言は、精神的な圧力をかける行為。

ケース4: パワハラ(精神的な攻撃)
【事例】
面接で役員が高圧的な態度で「君みたいな考え方じゃどこも採用しないよ」「そんなこともわからないの?」と人格を否定するような暴言を吐き、学生を精神的に追い詰めた。
【問題点】
「圧迫面接」として知られる手法だが、これは完全にパワハラ。学生のストレス耐性を見るつもりかもしれないが、企業イメージを大きく損なう行為。

4. なぜ就活ハラスメントは起きるのか? 3つの構造的要因

要因①: 圧倒的な力関係の差
採用する側と採用される側には、圧倒的な力関係の差があります。 学生は「この会社に入りたい」という強い思いを持っており、企業側の要求を断りにくい心理状態にあります。 企業側が「これくらい普通」と思っていることでも、学生にとっては大きな苦痛になることがあります。

要因②: 「昔は当たり前だった」という感覚
「自分が就活していた時は、飲み会に誘われるのが普通だった」 「多少の冗談は場を和ませるために必要」 そんな「昔の常識」が、今の時代には通用しません。 時代は変わり、ハラスメントに対する社会の目は厳しくなっています。アップデートできていない企業は、リスクを抱えたまま採用活動を続けていることになります。

要因③: 「うちは大丈夫」という過信
「うちは小さな会社だから」 「社員はみんな真面目だから」 「そんなハラスメントをする人はいない」 そんな過信が、最も危険です。 ハラスメントの多くは「悪意なく」起こります。善意のつもり、親しみのつもりの言動が、相手を傷つけることがあるのです。

5. 就活ハラスメントがもたらす企業への深刻な影響

影響①: 企業イメージの失墜
SNSの時代、学生が「この会社で就活ハラスメントを受けた」と投稿すれば、瞬く間に拡散されます。 一度失った信用を取り戻すのは非常に困難です。特に中小企業は、大企業と違って広報体制が整っていないため、炎上した際のダメージは計り知れません。

影響②: 優秀な人材の獲得機会の喪失
就活生は情報を共有します。「あの会社の面接、セクハラされた」という噂が広がれば、優秀な学生は応募してこなくなります。 採用難の時代に、自ら優秀な人材を遠ざけることになるのです。

影響③: 既存社員の士気低下
「自分の会社がハラスメント企業だった」と知った時、既存社員はどう思うでしょうか? 誇りを持って働いていた社員の士気は下がり、離職につながる可能性もあります。

影響④: 法的リスクと企業名公表
2026年末までに施行される法改正により、就活ハラスメント防止措置を講じないことは法律違反となります。 勧告に従わない場合、企業名が公表される可能性もあります。

6. 「知らなかった」では済まされない時代に

法律が施行されれば、「そんな法律があるなんて知らなかった」という言い訳は通用しません。

また、「社員がやったことだから会社は関係ない」という主張も認められません。企業には、社員の行為を管理し、ハラスメントを防止する責任があるのです。

次回予告: 第2回「2025年法改正の全貌 企業に求められる義務とは」

今回は、就活ハラスメントとは何か、その実態と問題の本質について解説しました。

次回の第2回では、2025年6月に成立した法改正の具体的な内容について、詳しく解説します。
– 企業にどんな義務が課されるのか
– 違反したらどうなるのか
– いつまでに対応すればいいのか

実務に直結する重要な情報をお届けしますので、ぜひ次回もご覧ください。

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